東京囲碁会館

今回紹介する碁会所、「東京囲碁会館」は、 新橋駅・烏森口を出て徒歩0分。 ニュー新橋ビル4階にあります。 クニが、この碁会所を探偵してみたいと思ったきっかけは 雑誌「囲碁未来」の原稿を書くのに、 碁会所の歴史について調べたことでした。 老舗の碁会所についてネットで検索していたところ 「日本で初めて、テーブル席を導入した碁会所」 としてヒットしたのです。 それっていつ頃の話? さらに調べると、 新橋で戦前から営業しているとあります。 今までかなりの数の碁会所をまわってきましたが、 戦前から続いている碁会所は初めて。 これは探偵するしかありません。 というわけでやってきました新橋~。 探偵初上陸です。 そもそも、 碁会所の入っている「ニュー新橋ビル」からしてユニーク。 ※ 手前の「ダンディハウス」の看板があるビル 築40年のレトロな雑居ビルで、 今ではまったく「ニュー」じゃないんですが、 紳士服店、チケットショップ、病院、ゲームセンター 100軒以上あるという飲食店などが混在しています。 なかには名店といわれる 洋食店や焼き鳥屋なども入っている、 というのは後日知りました。 ※面白そうな店がいろいろ。床屋さん う~ん、夜も来てみたいですね。 まさにサラリーマンのための(ビジネスマンじゃなくて) 大きなコンビニって感じです。 碁会所のある4階まで上ると、 やや閑散とした雰囲気ですが、 目指す碁会所を外からのぞくと、 かなりお客さんが入っている様子。 ※ここは入り口ではなく、右手に回り込むと入口があります 店の入り口には、 なぜか通路に飛び出して折りたたみ椅子があり、 店の方らしき女性が座っています。 中にも女性がいて、 シホクニが 「打ちたいんですけれど…」 と声をかけると、 「どうぞどうぞ」 とにこやかに招き入れてくれました。 席料はというと 「650円になります」 って、安っ! 都内で男女ともに650円は、格安です。 さっそく、 実はブログで紹介したいので、 お話しを伺いたいと伝えると、 じきに席亭が戻るので声をかけますとのこと。 シホと打ちながら待つことにしました。 碁会所の椅子は背もたれつきが多いのですが、 ここは背もたれなし。 でも、背筋が伸びていいかも。 年配の男性が多いのは、 他の碁会所と変わりませんが、 スーツ姿が目立つのは新橋らしい印象です。 そうこうしているうちに、席亭登場。 久保田七豊(かずとよ)さん、70歳です。 ※店の外に置かれた椅子にて。 よくここにいらっしゃるそう ところが久保田さん、 ご挨拶をするなり 「いや私は席亭というか… ここの代表取締役は妻なんですよ」 とおっしゃいます。 ここから、この碁会所の歴史が 少しずつ明るみに出てくるのです。 実はこの「東京囲碁会館」の創設者は 安永一(はじめ)さん。 「中国流の創始者」として知られる 伝説の人物でした。 碁をやっていて知らない人はいない、 というほどの有名人ですが、 シホクニは勉強不足で存じ上げず、失礼をしました。 そこで。 安永一について、ちょっとおさらいしておきましょう。 安永一は、1901年(明治34年)生まれ。1994年没。 東北帝国大学数学科中退。 アマチュアの囲碁棋士で、囲碁評論家、囲碁ライター。 囲碁普及にも熱心で、プロ棋士の育成にも尽力。 小松秀樹九段は安永門下である。 1934年に出版された「囲碁革命 新布石法」は、 木谷實、呉清源との共著。大きな話題を呼んだ。 1932年~「棋道」誌編集長。 1937年~「囲碁春秋」誌主幹を務める。 1962年、全日本アマチュア囲碁連盟設立時の理事長に就任。 「小目、星、辺」と打つ布石法を中国で広め、 これが逆輸入される形で日本でも定着した。 現在も人気のあるこの「中国流」は、「安永流」とも呼ばれる。 1980年、78歳で世界アマチュア囲碁選手権に日本代表として出場し、 世界第3位。 碁会所経営にも熱心で、 「東京囲碁会館」のほかに 「神戸囲碁会館」「安永道場・伊丹囲碁センター」を創立。 ともに現在も営業している。 と、以上が主なプロフィール。 すごい方ですね。 そしてなんと 受付にいらした二人の女性は、安永氏の娘さんでした。 (写真は撮らせていただけませんでした) 久保田さんは、 伊丹の碁会所で安永さんと交流があり、 それが縁で、 娘の「とし子」さんと結婚したのです。 「代表取締役」の意味が、やっとわかりました。 席亭の久保田さんが碁を覚えたのは、20歳の頃。 学生時代、 時間に余裕があった時に友人から教わり、 すっかり碁の面白さにハマりました。 そこから碁会所に出入りするようになり、 仕事の赴任先だった伊丹で 安永氏の碁会所に通うようになったのです。 久保田さんが碁会所経営に参加することになったのは、 ご自身の仕事を引退してから。 それまで「東京囲碁会館」は、 安永氏の奥様と、娘さんで切り盛りしていました。 棋力は久保田さん六段、奥様は四段。 教室などはありませんが、 お相手がいなければ、打ってくださるそうです。 碁会所の話に戻りましょう。 「東京囲碁会館」がオープンしたのは、昭和11年。 戦前のことでした。 碁会所といえば畳敷きの道場スタイルが主流だったところを テーブル席にしたのは 安永氏の発案だったようです。 当時としては、モダンな碁会所だったのでしょうね。 開店当初は 同じ新橋の今とは違うビルで営業していました。 現在の倍以上ある広い碁会所でしたが、 高度経済成長期には そこが、連日大盛況だったといいます。 囲碁人口が今よりずっと多かった、 いい時代のお話ですね。 さすがに戦前の様子は 久保田さんもわからないそうですが、 戦争中も営業していたといいますから、 人気の碁会所だったのでしょう。 その後、ビルが取り壊されることになり 現在の場所に移って30年が経ちます。 老舗ならではの面白さは つい最近まで取り入れていた 席料のシステムにも垣間見ることができます。 改定前の席料は、500円。 さらに、1局につき負けたほうが30円支払う。 というのです。 2局打てば、碁会所の収入は一人につき530円、 という寸法。 ささやかな額ですが、 この30円のおかげで、対局が白熱したといいますか ら面白いですね。 ※こちらは現在の料金表 ペットボトル(500ml)が100円はコンビニより安い この碁会所でもう一つありがたいのが トイレです。 ビルの共同トイレなのですが、 最近改装したそうでとてもきれい。 女性にはうれしいですね。 レトロな雰囲気を味わえる「東京囲碁会館」。 昭和にタイムスリップできる 不思議な空間でした。 と、余韻に浸って終わるはずだったんですが、 実はこの日、 取材を終えて店内の写真を撮っているときに アクシデントが起こりました。 クニのiPhoneが突然フリーズしたのです。 最初はちょっとしたトラブル、くらいに思っていたのですが いくらやっても動かない。 慌ててシホに、写真を撮り直してもらい、 何とかしようと格闘していたのですが、 アップルマークが出たと思ったら 真ん中に不吉な青い線がさーっと。 結局 修理に持っていったところ、 水ぬれが原因の故障で、 データもろとも息を引き取りました。 ですので、 今回は文・クニ、写真・シホでお届けします。 (シホ、ありがとう) 凹んだまま遅れて打ち上げに参加しましたが、 テンション上がらず。 Aノッチ、Mシュー、シホ、 そして今回特別参加してくれたKマちゃん、 ご迷惑をおかけしました。                       by クニ ↓応援のポチリをいただけると、うれしいです。 人気ブログランキングへ ■東京囲碁会館 住所    東京都港区新橋2-16-1        ニュー新橋ビル4F 電話    03-3580-4870 営業時間 AM11時~PM9時半 席料    650円 定休日   日曜・祝日  碁会所探偵シホ&クニ

Leave a comment